1-2 脳卒中の医療体制構築に係る指針


[通知] 疾病・事業及び在宅医療に係る医療体制について

脳卒中の医療体制構築に係る指針

脳卒中を発症した場合、まず急性期医療において内科的・外科的治療が行われ、同時に機能回復のためのリハビリテ-ションが開始される。リハビリテ-ションを行ってもなお障害が残る場合、中長期の医療及び介護支援が必要となる。
このように一人の脳卒中患者に必要とされる医療・介護はその病期・転帰によって異なる。さらに、重篤な患者の一部には、急性期を乗り越えたものの、重度の後遺症等によって退院や転院が困難となる状況のあることが指摘されており、それぞれの機関が相互に連携しながら、継続してその時々に必要な医療・介護・福祉を提供することが必要である。
本指針では、「第1 脳卒中の現状」で脳卒中の発症・転帰がどのようなものであるのか、どのような医療が行われているのかを概観し、次に「第2 医療機関とその連携」でどのような医療体制を構築すべきかを示している。
都道府県は、これらを踏まえつつ、「第3 構築の具体的な手順」に則して、地域の現状を把握・分析し、また各病期に求められる医療機能を理解した上で、地域の実情に応じて圏域を設定し、その圏域ごとの医療機関とさらにそれら医療機関相互の連携の検討を行い、最終的には都道府県全体で評価まで行えるようにする。


第1 脳卒中の現状
脳卒中は、脳血管の閉塞や破綻によって脳機能に障害が起きる疾患であり、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血に大別される。
脳梗塞は、さらに、アテロ-ム硬化(動脈硬化)により血管の内腔が狭くなりそこに血栓ができて脳血管が閉塞するアテロ-ム血栓性脳梗塞、脳の細い血管が主に高血圧を基盤とする変化により閉塞するラクナ梗塞、心臓等に生じた血栓が脳血管まで流れ血管を閉塞する心原性塞栓症の3種類に分けられる。
また、脳出血は脳の細い血管が破綻するものであり、くも膜下出血は脳動脈瘤が破綻し出血するものである。
脳卒中発症直後の医療(急性期の医療)は、脳梗塞、脳出血及びくも膜下出血によって異なるが、急性期を脱した後の医療は共通するものが多いことから、本指針においては一括して記載することとする。

1 脳卒中の疫学
1年間に救急車によって搬送される急病患者の約10%、約31万人が脳卒中(脳血管疾患)を含む脳疾患である1。また脳卒中によって継続的に医療を受けている患者数は約134万人と推計される2。
さらに、年間約12.3万人が脳卒中を原因として死亡し、死亡数全体の10.3%を占め、死亡順位の第3位である3。
脳卒中は、死亡を免れても後遺症として片麻痺、嚥下障害、言語障害、認知障害、遷延性意識障害などの後遺症が残ることがある。
介護が必要になった者の21.5%は脳卒中が主な原因であり第1位である4。
これらの統計から、脳卒中は、発症後生命が助かったとしても後遺症が残ることも多く、患者及びその家族の日常生活に与える影響は大きい。

2 脳卒中の医療
(1) 予防
脳卒中の最大の危険因子は高血圧であり、発症の予防には高血圧のコントロ-ルが重要である。その他、糖尿病、脂質異常症、不整脈(特に心房細動)、無症候性病変、喫煙、過度の飲酒なども危険因子であり、生活習慣の改善や適切な治療が重要である。
また、脳卒中の無症候性病変、危険因子となる画像異常等の発見にはMRI、MRアンギオグラフィ(以下「MRA」という。)、頸動脈超音波検査が行われている。
一過性脳虚血発作(TIA)直後は脳梗塞発症リスクが高く、これを疑えば、脳梗塞予防のための適切な治療を速やかに開始する。
同時に、住民に脳卒中の症状や発症時の緊急受診の必要性を周知させるように、啓発を進める必要がある。
(2) 発症直後の救護、搬送等
脳卒中を疑うような症状が出現した場合、本人や家族等周囲にいる者は、速やかに専門の医療施設を受診できるよう行動することが重要である。できるだけ早く治療を始めることでより高い効果が見込まれ、さらに後遺症も少なくなることから、診断や治療の開始を遅らせることにならないよう、速やかに救急隊を要請する等の対処を行う。
救急救命士を含む救急隊員は、メディカルコントロ-ル体制※の下で定められた、病院前における脳卒中患者の救護のためのプロトコ-ル(活動
基準)に則して、適切に観察・判断・救急救命処置等を行った上で、対応が可能な医療機関に搬送することが重要である。このため、病院到着前に脳卒中の重症度を点数化し、組織プラスミノゲン・アクチベ-タ(t-PA)の静脈内投与による血栓溶解療法の適応や血管内治療(機械的血栓除去術、経動脈的血栓溶解療法等)など、超急性期の再開通治療の適応※※となる傷病者を抽出することなどを目的とした病院前脳卒中スケ-ルを活用することが望ましい。
※ メディカルコントロ-ル体制については、「救急医療の体制構築に係る指針」を参照。
※※ 超急性期の再開通治療(t-PAなど)の適応:t-PA静注療法は、発症3時間以内の脳梗塞患者のうち、広範な早期脳虚血性変化や頭蓋内出血などの禁忌項目に該当しない患者が対象となる。また、経動脈的血栓溶解療法は発症6時間以内の脳梗塞の一部、機械的血栓除去術は発症8時間以内の脳梗塞患者の一部の患者が対象となる。
(3) 診断
問診や身体所見の診察等に加えて、画像検査(CT、MRI、MRA、超音波検査等)を行うことで正確な診断が可能になる。最近ではCTの画像解像度の向上、MRIの普及もあり、脳梗塞超急性期の診断が可能となり、血栓溶解療法の適応や転帰がある程度予測できるようになった。
また、救急患者のCT、MRI画像を専門的な診断が可能な施設へネットワ-ク経由で伝送すること等により、専門的な医師がいない医療機関で早期診断を行うことも考えられる。
(4) 急性期の治療
脳卒中の急性期には、呼吸管理、循環管理等の全身管理とともに、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血等の個々の病態に応じた治療が行われる。
① 脳梗塞では、まず発症後3時間以内の超急性期血栓溶解療法(t-PA)の適応患者に対する適切な処置が取られる必要がある。治療開始までの時間が短いほどその有効性は高く、合併症の発生を考慮すると発症後3時間以内に治療を開始することが重要である。その際の目安は、発症から医療機関到着まで2時間以内、来院してから治療の開始まで1時間以内である。
同じく発症後8時間以内の脳梗塞患者に対しては、施設によっては血管内治療による血栓除去術を行うことを考慮する。
また超急性期血栓溶解療法の適応とならない患者も、できる限り早期に、脳梗塞の原因に応じた、抗凝固療法や抗血小板療法、脳保護療法などを行うことが重要である。
② 脳出血の治療は、血圧や脳浮腫の管理、凝固能異常時の是正が主体であり、出血部位(皮質・皮質下出血や小脳出血等)によって手術が行われることもある。
③ くも膜下出血の治療は、動脈瘤の再破裂の予防が重要であり、再破裂の防止を目的に開頭手術による外科的治療あるいは開頭を要しない血管内治療を行う。
また脳卒中の治療に際しては、専門チ-ムによる診療や脳卒中の専用病室※等での入院管理により予後を改善できることが明らかになってきている。
※ 専門医療スタッフが急性期からの濃厚な治療とリハビリテ-ションを組織的かつ計画的に行う脳卒中専用の治療病室。例えば、診療報酬上で脳卒中の入院医療管理料が算定できる治療室である脳卒中ケアユニット等。
(5) リハビリテ-ション
脳卒中のリハビリテ-ションは、病期によって分けられる。
① 急性期に行うリハビリテ-ションは、廃用症候群や合併症の予防及びセルフケアの早期自立を目的として、可能であれば発症当日からベッドサイドで開始する。
② 回復期に行うリハビリテ-ションは、機能回復や日常生活動作(ADL)の向上を目的として、訓練室での訓練が可能になった時期から集中して実施する。
③ 維持期に行うリハビリテ-ションは、回復した機能や残存した機能を活用し、歩行能力等の生活機能の維持・向上を目的として実施する。
(6) 急性期以後の医療・在宅療養
急性期を脱した後は、再発予防のための治療、基礎疾患や危険因子(高血圧、糖尿病、脂質異常症、不整脈(特に心房細動)、無症候性病変、喫煙、過度の飲酒等)の継続的な管理、脳卒中に合併する種々の症状や病態に対する加療が行われる。
在宅療養では、上記治療に加えて、機能を維持するためのリハビリテ-ションを実施し、在宅生活に必要な介護サ-ビスを受ける。脳卒中は再発することも多く、患者の周囲にいる者に対する適切な対応の教育等といった再発に備えることが重要である。
なお、重篤な神経機能障害・精神機能障害を生じた患者の一部では、急性期を脱しても重度の後遺症等により退院や転院が困難となっている状況が見受けられる。これらの患者は、急性期の医療機関において救命医療を受けたものの、重度の後遺症があるため、回復期の医療機関等への転院や退院が行えず、当該医療機関にとどまっていることが指摘されている。
この問題の改善には、在宅への復帰が容易でない患者を受け入れる医療機関、介護・福祉施設等と、急性期の医療機関との連携強化など、総合的かつ切れ目のない対応が必要である。


第2 医療機関とその連携

1 目指すべき方向
前記「第1 脳卒中の現状」を踏まえ、個々の医療機能、それを満たす医療機関、さらにそれら医療機関相互の連携により、医療から介護サ-ビスまでが連携し継続して実施される体制を構築する。また、都道府県は、医療機関の協力を得て、脳卒中に関する市民への啓発を積極的に行うことが重要である。
(1) 発症後、速やかな搬送と専門的な診療が可能な体制
① 発症後2時間以内の、専門的な診療が可能な医療機関への救急搬送
② 医療機関到着後1時間以内の専門的な治療の開始
(2) 病期に応じたリハビリテ-ションが可能な体制
① 廃用症候群や合併症の予防、セルフケアの早期自立のためのリハビリテ-ションの実施
② 機能回復及び日常生活動作向上のために専門的かつ集中的なリハビリテ-ションの実施
③ 生活機能を維持又は向上させるリハビリテ-ションの実施
(3) 在宅療養が可能な体制
① 生活の場で療養できるよう、医療及び介護サ-ビスが相互に連携した支援

2 各医療機能と連携
前記「1 目指すべき方向」を踏まえ、脳卒中の医療体制に求められる医療機能を下記(1)から(6)に示す。
都道府県は、各医療機能の内容(目標、医療機関等に求められる事項等)について、地域の実情に応じて柔軟に設定する。
(1) 発症予防の機能【予防】
① 目標
・ 脳卒中の発症を予防すること
② 医療機関に求められる事項
次に掲げる事項を含め、該当する医療機関は関係する診療ガイドラインに則した診療を実施していることが求められる。
・ 高血圧、糖尿病、脂質異常症、心房細動、無症候性病変、喫煙、過度の飲酒等の基礎疾患及び危険因子の管理が可能であること
・ 突然の症状出現時における対応について、本人及び家族等患者の周囲にいる者に対する教育、啓発を実施すること
・ 突然の症状出現時に、急性期医療を担う医療機関への受診勧奨について指示すること
(2) 応急手当・病院前救護の機能【救護】
① 目標
・ 脳卒中の疑われる患者が、発症後遅くとも2時間以内に専門的な診療が可能な医療機関に到着できること。また2時間を超える場合でも、脳梗塞の場合は機械的血栓除去術や経動脈的血栓溶解術等の血管内治療、脳出血の場合は血腫除去術、脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血の場合は脳動脈瘤クリッピングやコイリング等の効果的な治療が行える可能性があるため、できるだけ早く、専門的な治療が可能な医療機関へ搬送することが望ましい。
② 関係者に求められる事項
(本人及び家族等周囲にいる者)
・ 発症後速やかに救急搬送の要請を行うこと
(救急救命士等)
・ 地域メディカルコントロ-ル協議会の定めた活動プロトコ-ルに沿って、脳卒中患者に対する適切な観察・判断・処置を行うこと
・ 急性期医療を担う医療機関へ発症後遅くとも2時間以内に搬送すること
(3) 救急医療の機能【急性期】
① 目標
・ 患者の来院後1時間以内(発症後3時間以内)に専門的な治療を開始すること(血管内治療など高度に専門的な治療を行える施設では、発症後3時間を超えても高度専門治療の実施について検討することが望ましい。)
・ 廃用症候群や合併症の予防、早期にセルフケアについて自立できるためのリハビリテ-ションを実施すること
② 医療機関に求められる事項
次に掲げる事項を含め、該当する医療機関は関係する診療ガイドラインに則した診療を実施していることが求められる。
・ 血液検査や画像検査(単純X線撮影、CT、MRI、超音波検査)等の必要な検査が24時間実施可能であること
・ 脳卒中が疑われる患者に対して、専門的診療が24時間実施可能であること(画像伝送等の遠隔診断に基づく治療を含む。)
・ 脳卒中評価スケ-ルなどを用いた客観的な神経学的評価が24時間実施可能であること
・ 適応のある脳梗塞症例に対し、来院後1時間以内(発症後3時間以内)に組織プラスミノゲン・アクチベ-タ(t-PA)の静脈内投与による血栓溶解療法が実施可能であること
・ 外科手術及び脳血管内手術が必要と判断した場合には来院後2時間以内の治療開始が可能であること
・ 呼吸、循環、栄養等の全身管理、及び感染症や深部静脈血栓症等の合併症に対する診療が可能であること
・ リスク管理のもとに早期座位・立位、関節可動域訓練、摂食・嚥下訓練、装具を用いた早期歩行訓練、セルフケア訓練等のリハビリテ-ションが実施可能であること
・ 回復期(あるいは維持期)の医療機関等と診療情報や治療計画を共有するなどして連携していること
・ 回復期(あるいは維持期)に、重度の後遺症等により自宅への退院が容易でない患者を受け入れる医療施設や介護施設等と連携し、その調整を行うこと
・ 脳卒中疑いで救急搬送された患者について、その最終判断を救急隊に情報提供することが望ましい
③ 医療機関の例
・ 救命救急センタ-を有する病院
・ 脳卒中の専用病室を有する病院
・ 急性期の血管内治療が実施可能な病院
・ 脳卒中に対する急性期の専門的医療を担う病院又は有床診療所
(4) 身体機能を回復させるリハビリテ-ションを実施する機能【回復期】
① 目標
・ 身体機能の早期改善のための集中的なリハビリテ-ションを実施すること
・ 再発予防の治療や基礎疾患・危険因子の管理を実施すること
② 医療機関に求められる事項
次に掲げる事項を含め、該当する医療機関は関係する診療ガイドラインに則した診療を実施していることが求められる。
・ 再発予防の治療(抗血小板療法、抗凝固療法等)、基礎疾患・危険因子の管理、及び抑うつ状態や認知症などの脳卒中後の様々な合併症への対応が可能であること
・ 失語、高次脳機能障害(記憶障害、注意障害等)、嚥下障害、歩行障害などの機能障害の改善及びADLの向上を目的とした、理学療法、作業療法、言語聴覚療法等のリハビリテ-ションが専門医療スタッフにより集中的に実施可能であること
・ 急性期の医療機関及び維持期の医療機関等と診療情報や治療計画を共有するなどして連携していること
③ 医療機関の例
・ リハビリテ-ションを専門とする病院又は診療所
・ 回復期リハビリテ-ション病棟を有する病院
(5)日常生活への復帰及び(日常生活の)維持のためのリハビリテ-ションを実施する機能【維持期】
① 目標
・ 生活機能の維持・向上のためのリハビリテ-ションを実施し、在宅等への復帰及び(日常生活の)継続を支援すること
・ 再発予防の治療や基礎疾患・危険因子の管理を実施すること
② 医療機関等に求められる事項
次に掲げる事項を含め、該当する医療機関は関係する診療ガイドラインに則した診療を実施していることが求められる。
・ 再発予防の治療、基礎疾患・危険因子の管理、抑うつ状態への対応等が可能であること
・ 生活機能の維持及び向上のためのリハビリテ-ション(訪問及び通所リハビリテ-ションを含む)が実施可能であること
・ 介護支援専門員が、自立生活又は在宅療養を支援するための居宅介護サ-ビスを調整すること
・ 回復期(あるいは急性期)の医療機関等と、診療情報や治療計画を共有するなどして連携していること
③ 医療機関等の例
・ 介護老人保健施設
・ 介護保険によるリハビリテ-ションを行う病院又は診療所


第3 構築の具体的な手順

1 現状の把握
都道府県は、脳卒中の医療体制を構築するに当たって、(1)(2)に示す項目を参考に、患者動向、医療資源及び医療連携等について、現状を把握する。
さらに、(3)に示す、病期・医療機能ごとおよびストラクチャ-・プロセス・アウトカムごとに分類された指標例により、数値で客観的に現状を把握する。
なお、(1)~(3)の各項目について、参考として調査名を示しているが、その他必要に応じて調査を追加されたい。
(1) 患者動向に関する情報
・年齢調整受療率(患者調査)
・ 健康診断・健康診査の受診率(国民生活基礎調査)
・ 高血圧性疾患患者の年齢調整外来受療率(患者調査)
・ 総患者数及びその内訳(性・年齢階級別、傷病小分類別)、患者流入割合、流出割合(患者調査)
・ 脳梗塞、脳出血、くも膜下出血の各疾患別の新規発生患者数(初発/再発)
・ 退院患者平均在院日数(患者調査)
・ 患者の退院時mRSスコア、発症1年後におけるADLの状況
・ 在宅等生活の場に復帰した患者の割合(患者調査)
・ 脳卒中を主な原因とする要介護認定者数(要介護度別)
・年齢調整死亡率(都道府県別年齢調整死亡率(業務・加工統計))
・ 脳卒中の再発率
・ 脳血管疾患患者の在宅死亡割合(人口動態統計)
(2) 医療資源・連携等に関する情報
① 救急搬送
・ 救急搬送件数(救急年報報告)
・ 搬送先医療機関
・ 発症から受診までに要した平均時間
・ 救急要請(覚知)から医療機関への収容までに要した平均時間(救急年報報告)
② 医療機関等
ア 救命救急センタ-、脳卒中の専用病室を有する医療機関
・ 検査、画像診断、治療体制(人員・施設設備、夜間休日の体制)
・ 実施可能な治療法(t-PAによる脳血栓溶解療法や血管内治療、外科治療を含む)、リハビリテ-ション
・ 連携の状況(他の医療機関との診療情報や治療計画の共有の状況、医療連携室の稼働状況、転院前の待機日数等)
イ リハビリテ-ションを専門とする病院、回復期リハビリテ-ション病棟を有する病院
・ 検査、治療体制(人員・施設設備)
・ 実施可能な脳卒中の治療法、リハビリテ-ション
・ 連携の状況(他の医療機関との診療情報や治療計画の共有の状況、医療連携室の稼働状況、入院中のケアプラン策定状況等)
ウ 介護老人保健施設、介護保険によるリハビリテ-ションを行う病院・診療所
・ 連携の状況(他の医療機関との診療情報や治療計画の共有の状況)
・ 介護サ-ビスの実施状況、介護サ-ビス事業所との連携の状況
(3) 指標による現状把握
別表2に掲げるような、病期・医療機能ごと及びストラクチャ-・プロセス・アウトカムごとに分類された指標例により、地域の医療提供体制の現状を客観的に把握し、医療計画に記載する。その際、公的統計等により全都道府県で入手可能な指標(必須指標)と、独自調査やデ-タ解析等により入手可能な指標(推奨指標)に留意して、把握すること。

2 圏域の設定
(1) 都道府県は、脳卒中の医療体制を構築するに当たって、「第2 医療機関とその連携」を基に、前記「1 現状の把握」で収集した情報を分析し、各病期に求められる医療機能を明確にして、圏域を設定する。
(2) 医療機能を明確化するに当たって、地域によっては、医療資源の制約等によりひとつの施設が複数の機能を担うこともあり得る。逆に、圏域内に機能を担う施設が存在しない場合には、圏域の再設定を行うこともあり得る。
(3) 圏域を設定するに当たっては、発症後3時間以内の脳梗塞における血栓溶解療法の有用性が確認されている現状に鑑みて、それらの恩恵を住民ができる限り公平に享受できるよう、従来の二次医療圏にこだわらず、メディカルコントロ-ル体制のもと実施されている搬送体制の状況等、地域の医療資源等の実情に応じて弾力的に設定する。
(4) 検討を行う場合は、地域医師会等の医療関係団体、現に脳卒中医療に従事する者、消防機関、介護サ-ビス事業者、住民・患者、市町村等の各代表が参画する。

3 連携の検討
(1) 都道府県は、脳卒中の医療体制を構築するに当たって、予防から救護、急性期、回復期、維持期まで継続して医療が行われるよう、また、関係機関の信頼関係が醸成されるよう配慮する。
また、医療機関、地域医師会等の関係者は、診療技術や知識の共有、診療情報の共有、連携する施設・医師等専門職種の情報の共有に努める。
(2) 保健所は、「地域保健法第4条第1項の規定に基づく地域保健対策の推進に関する基本的な指針」(平成6年厚生省告示第374号)の規定に基づき、また、「医療計画の作成及び推進における保健所の役割について」(平成19年7月20日健総発第0720001号健康局総務課長通知)を参考に、医療連携の円滑な実施に向けて、地域医師会等と連携して医療機関相互又は医療機関と介護サ-ビス事業所との調整を行うなど、積極的な役割を果たすこと。
(3) 医療計画には、原則として、各医療機能を担う医療機関等の名称を記載する。
なお、地域によっては、医療資源の制約等によりひとつの医療機関が複数の機能を担うこともある。
さらに、医療機関等の名称については、例えば医療連携体制の中で各医療機能を担う医療機関等が圏域内に著しく多数存在する場合にあっては、地域の実情に応じて記載することで差し支えないが、住民に分かりやすい周知に努めるものとする。

4 課題の抽出
都道府県は、「第2 医療機関とその連携」を踏まえ、「1 現状の把握」で収集した情報や指標により把握した数値から明確となった現状について分析を行い、地域の脳卒中の医療体制の課題を抽出し、医療計画に記載する。
その際、現状把握に用いたストラクチャ-・プロセス・アウトカム指標の関連性も考慮し、病期・医療機能による分類も踏まえ、可能な限り医療圏ごとに課題を抽出する。

5 数値目標
都道府県は、脳卒中の良質かつ適切な医療を提供する体制について、事後に定量的な比較評価を行えるよう、「4 課題の抽出」で明確にした課題に対して、地域の実情に応じた目標項目やその数値目標、目標達成に要する期間を設定し、医療計画に記載する。
数値目標の設定に当たっては、各指標の全国デ-タ等を参考にするとともに、基本方針第7に掲げる諸計画に定められる目標を勘案するものとする。
なお、達成可能なものだけを目標とするのではなく、真に医療圏の課題を解決するために必要な目標を設定することとする。

6 施策
数値目標の達成には、課題に応じた施策を実施することが重要である。都道府県は、「4 課題の抽出」に対応するよう「5 数値目標」で設定した目標を達成するために行う施策について、医療計画に記載する。

7 評価
計画の実効性を高めるためには、評価を行い、必要に応じて計画の内容を見直すことが重要である。都道府県は、あらかじめ評価を行う体制を整え、医療計画の評価を行う組織や時期を医療計画に記載する。この際、少なくとも施策の進捗状況の評価については、1年ごとに行うことが望ましい。また、数値目標の達成状況、現状把握に用いた指標の状況について、少なくとも5年ごとに調査、分析及び評価を行い、必要があるときは、都道府県はその医療計画を変更することとする。
さらに、医療の質について客観的な評価を行うために、症例登録等を行うことが今後必要である。

8 公表
都道府県は、住民に分かりやすい形で医療計画を公表し、医療計画やその進捗状況を周知する必要がある。このため、指標による現状把握、目標項目、数値目標、施策やその進捗状況、評価体制や評価結果を公表する。その際、広く住民に周知を図るよう努めるものとする。


1 消防庁「平成23年版 救急・救助の現況」(平成23年)
2 厚生労働省「患者調査」(平成20年)
3 厚生労働省「人口動態統計(確定数)」(平成22年)
4 厚生労働省「国民生活基礎調査」(平成22年)