2-6 在宅医療の体制構築に係る指針


[通知] 疾病・事業及び在宅医療に係る医療体制について

在宅医療の体制構築に係る指針

多くの国民が自宅等住み慣れた環境での療養を望んでいる。高齢になっても病気になっても自分らしい生活を支える在宅医療の提供体制を構築することは、国民の生活の質の向上に資するものである。
また、超高齢社会を迎え、医療機関や介護保険施設等の受入れにも限界が生じることが予測される中で、在宅医療は慢性期及び回復期患者の受け皿として、さらに看取りを含む医療提供体制の基盤の一つとして期待されている。
本指針では「第1 在宅医療の現状」において、我が国の疾病構造及び在宅医療のニ-ズの変化や在宅医療に係る資源の現状を概観し、次に「第2 関係機関とその連携」において、どのような医療体制を構築すべきかを示している。
都道府県は、これらを踏まえつつ、「第3 構築の具体的な手順」に則して、地域の現状を把握・分析し、また在宅医療に求められる医療機能を理解した上で、地域の実情に応じて圏域を設定し、その圏域ごとの医療機関とそれらの関係機関間の連携の検討を行い、最終的には都道府県全体で評価まで行えるようにする。


第1 在宅医療の現状

1 在宅医療の現状
(1) 疾病構造の変化
昭和10~20年代において、我が国の死因の第1位であった結核に代わり、昭和33年以降は、悪性新生物(がん)、心疾患、脳血管疾患が死因の上位を占めるようになった1。また、要介護状態に至る主な原因疾患に関する平成22年の報告では、脳血管疾患が約21%、認知症が約15%、関節疾患が約11%、老衰が約14%となっている2。さらに認知症高齢者の日常生活自立度Ⅱ※以上の人数については、平成27年に250万人、平成37年には323万人に達すると推計されている3。自宅や地域で疾病や障害を抱えつつ生活を送る者が今後も増加していくことが考えられる。
※認知症高齢者の日常生活自立度Ⅱとは、日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さが多少見られても、誰かが注意すれば自立できる状態をいう。
(2) 在宅医療のニ-ズの増加と多様化
平成22年における65歳以上の高齢者人口は、2,937万人であるが1、平成54年には3,878万人となりピ-クを迎え4、同年の75歳以上の人口割合は、現在の11%から21%に増加する。また、65歳以上の高齢者のいる世帯の約半数が、独居又は夫婦のみの世帯である。さらに、死亡総数は現在の約120万人から約166万人に増える4。今後は、高齢者の世帯動向、居宅等の形態も踏まえ、医療提供のあり方を検討することが重要である。
在宅療養支援病院・診療所において訪問診療又は往診を受けている在宅療養者は、介護保険3施設※に入院・入所中の者よりも、人工呼吸器、気管切開、酸素療法等の医療を必要とする者が多いことが報告されている5。
また、在宅人工呼吸指導管理料の1ヶ月あたりの算定件数は、平成13年の2,455件から、平成21年の12,783件へと約5倍に増加している6。
※介護保険3施設:介護老人保健施設、特別養護老人ホ-ム、介護療養型医療施設
さらに近年、疾病や障害を抱えながらも自宅や住み慣れた地域で生活をする小児や若年層の在宅療養者が増加している。医療保険の訪問看護を受ける小児(0~9歳)の数は、平成13年の1ヶ月あたり842人から、平成21年の2,928人へと約3.5倍に増加している7。
疾病構造の変化や高齢化、QOL向上を重視した医療への期待の高まり等により、在宅医療のニ-ズは増加し、また多様化している。

2 在宅医療の提供体制
(1) 退院支援
在宅医療は、慢性期及び回復期患者の受け皿としての機能を期待されている。近年、在宅療養を選択する人工呼吸器を装着した者や何らかの医療処置を必要とする者が増えてきたことから、医療の継続性や退院に伴って新たに生じる心理的・社会的問題の予防や対応のために、入院初期から退院後の生活を見据えた退院支援の重要性が高まっている。
具体的には、病院における組織的な取り組み(退院支援担当者の配置や退院困難者のスクリ-ニングの導入等)や多職種による退院前カンファレンス等が行われており、自宅への退院者の増加や平均在院日数の減少、患者や家族のQOL向上等の効果が報告されている8。
しかし、実際に退院支援担当者を配置している病院は、2,450ヶ所(28%)である9。病床規模別にみると、300床以上の病院では約半数の病院で退院支援の担当者を配置しており、病床規模が大きい病院ほど複数の担当者を配置している傾向がみられる9。
(2)日常の療養生活の支援
① 訪問診療・往診
在宅医療を受けた患者数は、1日に98,700人で、平成17年の64,800人に比較し、52.3%増加している10。
訪問診療を提供している医療機関は、全診療所99,083ヶ所のうち、19,501ヶ所(19.7%)、全病院8,794ヶ所のうち2,582ヶ所(29.4%)である9。また、在宅療養支援病院及び在宅療養支援診療所数は平成23年7月現在、それぞれ12,848ヶ所、445ヶ所の届け出があり11、年々増加しているものの、都道府県別の人口10万人当たりでみると、前者が3.9から20.9(全国値10.1)、後者が0.05から1.25(全国値0.41)とばらつきが見られる12。
診療所を対象とした調査では、在宅療養支援診療所の届出をしない理由として、約70%が24時間対応の困難さを挙げた13。在宅療養支援診療所の81%が医師数1名の小規模な診療所であり14、24時間対応、急変時の対応及び看取りを行うための連携体制の構築が求められている。
② 訪問看護
訪問看護利用者約40.1万人/月のうち、医療保険による利用者は約9.9万人/月15、介護保険による訪問看護利用者が約30.2万人/月16である。
介護保険における請求事業所数でみると、訪問看護ステ-ションは5,978カ所16、訪問看護を実施する病院・診療所は1,909カ所である16。都道府県別に人口10万人当たりの訪問看護事業所数(訪問看護ステ-ション、訪問看護を実施している医療機関の合計)をみると、3.5から10.8とばらつきがみられる(全国値6.8)17。
従業員が5人未満の小規模な訪問看護ステ-ションが60%を占める18が、訪問看護ステ-ション1カ所あたり、平均26.8カ所の医療機関から訪問看護指示書が交付されており、平均17.3カ所の居宅介護支援事業所から居宅サ-ビス計画書を受け取っている等、多くの医療機関や介護事業所と連携している実態が報告されている15。
③ 訪問歯科診療
在宅歯科医療を受けた患者は、約25,000人/日(歯科外来患者総数の1.9%)であり、そのうち、95.7%が65歳以上である10。
全歯科診療所67,779ヶ所のうち、訪問歯科診療を提供している歯科診療所は、8,214ヶ所(12.1%)である9。在宅又は介護施設等における療養を歯科医療面から支援する在宅療養支援歯科診療所は3,700ヶ所であるが19、都道府県別の歯科診療所に占める在宅療養支援歯科診療所の割合をみると、0.4%から36.1%とばらつきがみられる(全国値5.5%)20。
要介護高齢者の約9割が歯科治療や専門的口腔ケアが必要とされているが、実際の受療者は約3割という報告もある21。口腔機能の低下や誤嚥性肺炎の予防等のためには、在宅療養者の歯科受療率の向上が課題となっている。
④ 訪問薬剤管理指導
介護保険の居宅療養管理指導を受けた者の数は、約11万人/月である22。
全薬局53,642カ所23のうち、在宅患者訪問薬剤管理指導料届出薬局数は、42,163ヶ所(78.4%)であるが11、都道府県別に届出割合をみると、48.5%から98.8%とばらつきがみられる(全国値78.6%)12。
医療保険の在宅患者訪問薬剤管理指導及び介護保険の居宅療養管理指導を行っている薬局等を対象とした調査24によると、患者の薬剤管理上の問題点として、薬剤の保管状況、服薬に関する理解不足、薬剤の飲み忘れ等が挙げられている。
(3) 急変時の対応
自宅での療養を希望していてもそれが実現できない理由として、急変時の対応に関する不安や家族への負担への懸念が挙げられる25。急変時の対応に関する患者の不安の軽減や家族の負担の軽減が、在宅での療養を継続するための重要な課題である。そのため、訪問診療や訪問看護については24時間対応が可能な連携体制の構築、在宅療養支援病院や有床診療所については在宅療養患者の病状の急変時における円滑な受け入れが求められている。
(4) 在宅での看取り
60%以上の国民が、終末期においても可能なかぎり自宅での療養を望んでおり25、患者や家族のQOLの維持向上を図りつつ療養生活を支えるとともに、患者や家族が希望した場合には、自宅で最期を迎えることを可能にする医療及び介護体制の構築が求められている。
また、高齢化の進展に伴い、介護施設等で最期を迎える者が増えていることから、在宅医療に係る機関が介護施設等による看取りを必要に応じて支援することが求められる。
我が国の在宅死亡率(自宅及び老人ホ-ムでの死亡率)をみると、平成18年の14.5%から増加に転じ、平成22年の在宅死亡率は16.1%となっている1。また、東京特別区及び政令指定都市等の大都市圏における在宅死亡率は17.9%と全国値より高くなっている1。


第2 関係機関とその連携

1 目指すべき方向
前記「第1 在宅医療の現状」を踏まえ、個々の役割や医療機能、それを満たす各関係機関、さらにそれら関係機関相互の連携により、在宅医療が円滑に提供される体制を構築する。
(1) 円滑な在宅療養移行に向けての退院支援が可能な体制
① 入院医療機関と在宅医療に係る機関との協働による退院支援の実施
(2)日常の療養支援が可能な体制
① 多職種協働により在宅療養者やその家族の生活を支える観点からの医療の提供
② 緩和ケアの提供
③ 家族への支援
(3) 急変時の対応が可能な体制
① 在宅療養者の病状急変時における往診体制及び入院病床の確保
(4) 患者が望む場所での看取りが可能な体制
① 住み慣れた自宅や介護施設等、患者が望む場所での看取りの実施
また、上記(1)から(4)の体制を構築するにあたり、地域における多職種連携を図りながら、24時間体制で在宅医療が提供されることが重要である。
こうした観点から、在宅医療において積極的役割を担う医療機関や在宅医療に必要な連携を担う拠点を医療計画に位置付けていくことが望まれる。

2 各医療機能と連携
前記「1 目指すべき方向」を踏まえ、在宅医療の提供体制に求められる医療機能を下記(1)から(4)に示す。都道府県は、各医療機能の内容(目標、関係機関等に求められる事項等)について、地域の実情に応じて柔軟に設定する。
(1) 円滑な在宅療養移行に向けての退院支援が可能な体制【退院支援】
① 目標
・ 入院医療機関と、在宅医療に係る機関の円滑な連携により、切れ目のない継続的な医療体制を確保すること
② 入院医療機関に求められる事項
・ 退院支援担当者を配置すること
・ 退院支援担当者は、できる限り在宅医療に係る機関での研修や実習を受けること
・ 入院初期から退院後の生活を見据えた退院支援を開始すること
・ 退院支援の際には、患者の住み慣れた地域に配慮した在宅医療及び介護資源の調整を心がけること
・ 退院後、患者に起こりうる病状の変化やその対応について、退院前カンファレンスや文書・電話等で、在宅医療に係る機関との情報共有を十分図ること
(医療機関の例)
・ 病院・有床診療所
※ 介護老人保健施設においても、在宅への移行に向けた取組みが行われている。
③ 在宅医療に係る機関に求められる事項
・ 在宅療養者のニ-ズに応じて、医療や介護を包括的に提供できるよう調整すること
・ 在宅医療や介護の担当者間で、今後の方針や病状に関する情報や計画を共有し、連携すること
・ 高齢者のみではなく、小児や若年層の在宅療養者に対する訪問診療、訪問看護、訪問薬剤指導等にも対応できるような体制を確保すること
・ 病院・有床診療所・介護老人保健施設の退院(退所)支援担当者に対し、地域の在宅医療及び介護資源に関する情報提供や在宅療養に関する助言を行うこと
(関係機関の例)
・ 病院・診療所
・ 訪問看護事業所
・ 薬局
・ 居宅介護支援事業所
・ 地域包括支援センタ-
※ 病院・診療所には、歯科を標榜するものを含む。以下同じ。
(2)日常の療養支援が可能な体制【日常の療養支援】
① 目標
・ 患者の疾患、重症度に応じた医療(緩和ケアを含む)が多職種協働により、できる限り患者が住み慣れた地域で継続的、包括的に提供されること
② 在宅医療に係る機関に求められる事項
・ 相互の連携により、在宅療養者のニ-ズに対応した医療や介護が包括的に提供される体制を確保すること
・ 医療関係者は、地域包括支援センタ-が地域ケア会議において在宅療養者に関する検討をする際には積極的に参加すること
・ 地域包括支援センタ-等と協働しつつ、在宅療養に必要な医療や介護、家族の負担軽減につながるサ-ビスを適切に紹介すること
・ がん(緩和ケア体制の整備)、認知症(身体合併等の初期対応や専門医療機関への適切な紹介)等、それぞれの疾患の特徴に応じた在宅医療の体制を整備すること
※ がん患者の在宅医療については、がんの医療体制構築に係る指針を参照。
・ 災害時にも適切な医療を提供するための計画(人工呼吸器等の医療機器を使用している患者の搬送等に係る計画を含む)を策定すること
・ 医薬品や医療・衛生材料等の供給を円滑に行うための体制を整備すること
・ 身体機能及び生活機能の維持向上のためのリハビリを適切に提供する体制を構築すること
(関係機関の例)
・ 病院・診療所
・ 訪問看護事業所
・ 薬局
・ 居宅介護支援事業所
・ 地域包括支援センタ-
・ 介護老人保健施設
・ 短期入所サ-ビス提供施設
(3) 急変時の対応が可能な体制【急変時の対応】
① 目標
・ 在宅療養者の病状急変時に対応できるよう、在宅医療を担う病院・
診療所、訪問看護事業所及び入院機能を有する病院・診療所との円滑な連携による診療体制を確保すること
② 在宅医療に係る機関に求められる事項
・ 病状急変時における連絡先をあらかじめ在宅療養者やその家族に提示し、また、求めがあった際に24 時間対応が可能な体制を確保すること
・ 24 時間対応が自院で難しい場合も、近隣の病院や診療所、訪問看護事業所等との連携により、24 時間対応が可能な体制を確保すること
・ 在宅医療に係る機関で対応できない急変の場合は、その症状や状況に応じて、搬送先として想定される入院医療機関と協議し入院病床を確保するとともに、搬送については地域の消防関係者へ相談する等連携を図ること
(関係機関の例)
・ 病院・診療所
・ 訪問看護事業所
・ 薬局
③ 入院医療機関に求められる事項
・ 在宅療養支援病院、有床診療所等において、連携している医療機関(特に無床診療所)が担当する在宅療養者の病状が急変した際に、必要に応じて一時受け入れを行うこと
・ 重症で対応できない場合は、他の適切な医療機関と連携する体制を構築すること
(医療機関の例)
・ 病院・診療所
(4) 患者が望む場所での看取りが可能な体制【看取り】
① 目標
・ 住み慣れた自宅や介護施設等、患者が望む場所での看取りを行うことができる体制を確保すること
② 在宅医療に係る機関に求められる事項
・ 終末期に出現する症状に対する患者や家族の不安を解消し、患者が望む場所での看取りを行うことができる体制を構築すること
・ 患者や家族に対して、自宅や住み慣れた地域で受けられる医療及び介護や看取りに関する適切な情報提供を行うこと
・ 介護施設等による看取りを必要に応じて支援すること
(関係機関の例)
・ 病院・診療所
・ 訪問看護事業所
・ 薬局
・ 居宅介護支援事業所
・ 地域包括支援センタ-
③ 入院医療機関に求められる事項
・ 在宅医療に係る機関で看取りに対応できない場合について、病院・有床診療所で必要に応じて受け入れること
(医療機関の例)
・ 病院・診療所
(5) 在宅医療において積極的役割を担う医療機関
前記(1)から(4)までに掲げる目標の達成に向けて、自ら24 時間対応体制の在宅医療を提供するとともに、他の医療機関の支援も行いながら、医療や介護の現場での多職種連携の支援を行う病院・診療所を在宅医療において積極的役割を担う医療機関として医療計画に位置付けることが望ましい。
基本的には、在宅療養支援病院、在宅療養支援診療所等の中から位置付けられることを想定している。
① 目標
・ 在宅医療の提供及び他医療機関の支援を行うこと
・ 多職種が連携し、包括的、継続的な在宅医療を提供するための支援を行うこと
・ 在宅医療を担う研修を行うこと
・ 災害時および災害に備えた体制構築への対応を行うこと
・ 在宅療養者の家族への支援を行うこと
・ 在宅医療に関する地域住民への普及啓発を行うこと
② 在宅医療において積極的役割を担う医療機関に求められる事項
・ 医療機関(特に一人の医師が開業している診療所)が必ずしも対応しきれない夜間や医師不在時、患者の病状の急変時等における診療の支援を行うこと
・ 在宅での療養に移行する患者にとって必要な医療及び介護の資源が十分確保できるよう、関係機関に働きかけること
・ 在宅医療に係る医療及び介護関係者に必要な基本的知識・技能に関する研修の実施や情報の共有を行うこと
・ 卒後初期臨床研修制度(歯科の場合、卒後臨床研修制度)における地域医療研修において、在宅医療の現場での研修を受ける機会等の確保に努めること
・ 災害時等にも適切な医療を提供するための計画(人工呼吸器等の医療機器を使用している患者の搬送等に係る計画を含む)を策定し、他の医療機関等の計画策定等の支援を行うこと
・ 地域包括支援センタ-等と協働しつつ、療養に必要な医療及び介護や家族の負担軽減につながるサ-ビスを適切に紹介すること
・ 入院機能を有する医療機関においては、在宅療養者の病状が急変した際の一時受入れを行うこと
・ 地域住民に対し、在宅医療の内容や地域の医療及び介護資源に関する情報提供を行うこと
(6) 在宅医療に必要な連携を担う拠点
前記(1)から(4)までに掲げる目標の達成に向けて、地域の実情に応じ、病院、診療所、訪問看護事業所、地域医師会等関係団体、保健所、市町村等の主体のいずれかを在宅医療に必要な連携を担う拠点として医療計画に位置付けることが望ましい。
在宅医療に必要な連携を担う拠点は、標準的な規模の市町村の人口(7~10万人程度)につき1カ所程度を目途に設けられることを想定しており、医療計画に位置付ける際には市町村と十分に協議することが重要である。
なお、前項の在宅医療において積極的役割を担う医療機関が在宅医療に必要な連携を担う拠点となることも想定される。
① 目標
・ 多職種協働による包括的かつ継続的な在宅医療の提供体制の構築を図ること
② 在宅医療に必要な連携を担う拠点に求められる事項
・ 地域の医療及び介護関係者による協議の場を定期的に開催し、在宅医療における連携上の課題の抽出及びその対応策の検討等を実施すること
・ 地域の医療及び介護資源の機能等を把握し、地域包括支援センタ-等と連携しながら、退院時から看取りまでの医療や介護にまたがる様々な支援を包括的かつ継続的に提供するよう、関係機関との調整を行うこと
・ 質の高い在宅医療をより効率的に提供するため、関係機関の連携による24時間体制の構築や多職種による情報共有の促進を図ること
・ 在宅医療に関する人材育成及び普及啓発を実施すること


第3 構築の具体的な手順

1 現状の把握
都道府県は、在宅医療の体制を構築するに当たって、(1)(2)に示す項目を参考に、患者動向、医療資源及び医療連携等について、現状を把握する。
さらに、(3)に示す、医療機能ごとおよびストラクチャ-・プロセス・アウトカムごとに分類された指標例により、数値で客観的に現状を把握する。
なお、(1)~(3)の各項目について、参考として調査名を示しているが、その他必要に応じて調査を追加されたい。
(1) 患者動向に関する情報
・ 往診を受けた患者数
・ 訪問診療を受けた患者数
・ 訪問歯科診療を受けた患者数
・ 訪問看護利用者数
・ 薬剤師による訪問薬剤指導の利用者数
・ 管理栄養士による訪問栄養指導の利用者数
・ 歯科衛生士による訪問歯科衛生指導の利用者数
・ 訪問リハビリテ-ション利用者数
・ 短期入所サ-ビス(ショ-トステイ)の利用者数
・ 退院患者の平均在院日数(患者調査)
・ 在宅死亡者数(人口動態統計)
(2) 医療資源・連携等に関する情報
・ 在宅医療を担う関係機関の数とその位置(在宅療養支援診療所、在宅療養支援病院、在宅療養支援歯科診療所、訪問看護事業所等)
・ 在宅医療に携わる人員・体制(在宅療養支援診療所・在宅療養支援病院の医師数、訪問看護ステ-ションの看護師数、24時間体制を取っている訪問看護ステ-ション数や看護師数等)
・ 連携の状況(関係機関間での診療情報や治療計画の共有の状況)
(3) 指標による現状把握
別表11に掲げるような、医療機能ごと及びストラクチャ-・プロセス・アウトカムごとに分類された指標例により、地域の医療提供体制の現状を客観的に把握し、医療計画に記載する。その際、公的統計等により全都道府県で入手可能な指標(必須指標)と、独自調査やデ-タ解析等により入手可能な指標(推奨指標)に留意して、把握すること。

2 圏域の設定
(1) 都道府県は、在宅医療提供体制を構築するに当たって、「第2 関係機関とその連携」を基に、前記「1 現状の把握」で収集した情報を分析し、退院支援、生活の場における療養支援、急変時の対応、看取りといった各区分に求められる医療機能を明確にして、圏域を設定する。
(2) 医療機能を明確化するに当たって、地域によっては、医療資源の制約等によりひとつの施設が複数の機能を担うこともあり得る。
(3) 圏域を設定するに当たって、在宅医療の場合、医療資源の整備状況や介護との連携のあり方が地域によって大きく変わることを勘案し、従来の二次医療圏にこだわらず、できる限り急変時の対応体制(重症例を除く)や医療と介護の連携体制の構築が図られるよう、市町村単位や保健所圏域等の地域の医療及び介護資源等の実情に応じて弾力的に設定する。
(4) 検討を行う場合は、地域医師会等の関係団体、在宅医療及び介護に従事する者、住民・患者、市町村等の各代表が参画する。

3 連携の検討
(1) 都道府県は、在宅医療提供体制を構築するに当たって、退院支援から生活の場における療養支援、急変時の対応、看取りまで継続して医療が行われるよう、また、関係機関の信頼関係が醸成されるよう配慮する。
また、医療機関、在宅医療及び介護の関係者及び地域医師会等の関係団体は、診療技術や知識の共有、連携する医療及び介護の関係機関等との情報の共有に努める。
さらに、都道府県は、在宅医療に係る機関の医師、歯科医師、薬剤師、看護職員、ケアマネジャ-等について、地域の保健医療関係機関・団体等と連携し、必要な専門的・基礎的知識及び技術を習得させるための研修の実施等により人材育成に努める。
(2) 保健所は、「地域保健法第4条第1項の規定に基づく地域保健対策の推進に関する基本的な指針」(平成6年厚生省告示第374号)の規定に基づき、また、「医療計画の作成及び推進における保健所の役割について」(平成19年7月20日健総発第0720001号健康局総務課長通知)を参考に、医療連携の円滑な実施に向けて、地域医師会等の関係団体と連携して医療機関相互の調整を行う等、積極的な役割を果たすこと。
(3) 医療計画には原則として、各医療機能を担う医療機関等の名称を記載する。
なお、地域によっては、医療資源の制約等によりひとつの医療機関等が複数の機能を担うこともある。
さらに、医療機関等の名称については、例えば医療連携体制の中で各医療機能を担う医療機関等が圏域内に著しく多数存在する場合にあっては、地域の実情に応じて記載することで差し支えないが、住民に分かりやすい周知に努めるものとする。

4 課題の抽出
都道府県は、「第2 医療機関とその連携」を踏まえ、「1 現状の把握」で明確にした現状について、指標により把握した数値となっている原因の分析を行い、地域の在宅医療の体制の課題を抽出し、医療計画に記載する。
その際、現状分析に用いたストラクチャ-、プロセス、アウトカム指標の関連性も考慮し、病期・医療機能による分類も踏まえ、可能な限り医療圏ごとに課題を抽出する。

5 数値目標
都道府県は、良質かつ適切な在宅医療を提供する体制について、事後に定量的な比較評価を行えるよう、「4 課題の抽出」で明確にした課題に対して、地域の実情に応じた目標項目やその数値目標、目標達成に要する期間を設定し、医療計画に記載する。
数値目標の設定に当たっては、各指標の全国デ-タ等を参考にするとともに、基本方針第7に掲げる諸計画に定められる目標を勘案するものとする。
なお、達成可能なものだけを目標とするのではなく、真に医療圏の課題を解決するために必要な目標を設定することとする。

6 施策
数値目標の達成には、課題に応じた施策・事業を実施することが重要である。都道府県は、「4 課題の抽出」に対応するよう「5 数値目標」で設定した目標を達成するために行う施策・事業について、医療計画に記載する。

7 評価
計画の実効性を高めるためには、評価を行い、必要に応じて計画の内容を見直すことが重要である。都道府県は、あらかじめ評価を行う体制を整え、医療計画の評価を行う組織や時期を医療計画に記載する。この際、少なくとも施策・事業の進捗状況の評価については、1年ごとに行うことが望ましい。
また、数値目標の達成状況、現状把握に用いた指標の状況について、少なくとも5年ごとに調査、分析及び評価を行い、必要があるときは、都道府県はその医療計画を変更することとする。

8 公表
都道府県は、住民に分かりやすい形で医療計画を公表し、医療計画やその進捗状況を周知する必要がある。このため、指標による現状把握、目標項目、数値目標、施策・事業やその進捗状況、評価体制や評価結果を公表する。その際、広く住民に周知を図るよう努めるものとする。


1 厚生労働省「人口動態調査統計(確定数)」(平成22年)
2 厚生労働省「国民生活基礎調査」(平成22年)
3 高齢者介護研究会報告書「2015年の高齢者介護~高齢者の尊厳を支えるケアの確立に向けて~」(平成15年)
4 国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(1月推計)」(平成24年)
5 「医療施設・介護施設の利用者に関する横断調査」(平成22年)
6 厚生労働省「社会医療診療行為別調査」
7 厚生労働省保険局医療課調べ
8 医療経済研究機構「退院準備から在宅ケアを結ぶ支援(リエゾンシステム)のあり方に関する研究」(平成19年)
9 厚生労働省「医療施設調査(静態)」(平成20年)
10 厚生労働省「患者調査」(平成20年)
11 厚生労働省保険局医療課調べ(平成23年)
12 厚生労働省保険局医療課調べ(平成23年)より算出
13 福岡県医師会他「在宅療養支援診療所実態調査」(平成19年)
14 厚生局デ-タ(平成23年7月)より算出
15 「訪問看護療養費調査」(平成23年)
16 厚生労働省「介護給付費実態調査」(平成23年12月)
17 厚生労働省「介護給付費実態調査」(平成22年)より算出
18日本看護協会「訪問看護事業所数の減少要因の分析及び対応策のあり方に関する調査研究事業」(平成21年)
19 厚生労働省保険局医療課調べ(平成21年)
20 厚生労働省保険局医療課調べ(平成21年)より算出
21 長寿科学総合研究事業「情報ネットワ-クを活用した行政・歯科医療機関・病院等
の連携による要介護者口腔保健医療ケアシステムの開発に関する研究」(主任研究者河野正司)(平成14年)
22 厚生労働省「介護給付費実態調査」(平成22年)
23 厚生労働省「衛生行政報告例」(平成21年)
24 平成19年度老人保健事業推進費等補助金「後期高齢者の服薬における問題と薬剤師の在宅患者訪問薬剤管理指導ならびに居宅療養管理指導の効果に関する調査研究」
25 「終末期医療に関する調査」(平成20年)