3 退出基準


[通知] 診療用放射線照射器具を永久的に挿入された患者の退出について
診療用放射線照射器具を永久的に挿入された患者の退出に関する指針

3 退出基準

国際放射線防護委員会(ICRP)では公衆に対する線量限度として1年間につき1ミリシーベルトを勧告している。また、ICRPPublication73では「患者の介護と慰撫を助ける友人や親族」の被ばくを医療被ばくと定義し、「患者の訪問者と核医学患者が退院したときの自宅における家族との両方に対しての防護の方針を決めるさい用いるために線量拘束値を設定すべきである。こうしたグループには小児が含まれることがある。委員会はこのような拘束値を勧告しなかったが、1件につき数mSv程度の値が合理的と思われる。」としている。
一方、国際原子力機関(IAEA)は「診断又は治療を受けている患者の介護、介助及び慰安を自発的に助ける(職業としてでなく)あいだに承知の上で被ばくする個人に対する線量、及び治療量の放射性核種を受けた患者又は小線源治療用線源で処置されている患者の訪問者に対する線量を、附則ⅡのⅡ―9項に定めるレベルを超えないように拘束しなければならない。」としている。なお、附則Ⅱ―9項では、「患者の診断検査又は治療の期間中の線量が5mSvを超えることがないように、拘束されなければならない。放射性物質を経口摂取した患者を訪問する子供の線量は、同様に、1mSv以下に拘束すべきである。」としている。
以上を参考に、本指針では、公衆及び介護者(被ばくを承知の上で患者の介護、慰撫にあたる家族や訪問者など。患者を訪問する子供は除く。以下同じ。)、患者を訪問する子供について抑制すべき線量の基準として、公衆に対しては1年間につき1ミリシーベルト、介護者については、患者及び介護者の双方に便益があることを考慮して1行為当たり5ミリシーベルト、患者を訪問する子供については1行為当たり1ミリシーベルトとし、放射能及び線量率による基準を定めた。なお、1年間に複数回の被ばくが起こる可能性があれば、それを考慮しなければならない。
退出に当たっては、3―1放射能及び線量率による基準、3―2診療用放射線照射器具を挿入された後の線源脱落の対策、3―3患者への注意および指導事項の3項目よりなる退出基準を遵守することとする。
3―1 放射能及び線量率による基準
医療法に基づいて診療用放射線照射器具を永久的に挿入された患者が病院内の診療用放射線照射器具使用室あるいは放射線治療病室等から退出する場合には、以下の(1)、(2)いずれかの基準を満たさなければならない。
(1) 適用量あるいは減衰を考慮した残存放射能に基づく基準
適用量あるいは減衰を考慮した残存放射能が表1に示す放射能を超えないこと。
(2) 測定線量率に基づく基準
患者の体表面から1メートル離れた地点で測定された線量率が表1に示す1センチメートル線量当量率を超えないこと。

1 診療用放射線照射器具を永久的に挿入された患者の退出における放射能と線量率

診療用放射線照射器具

適用量または体内残存放射能(MBq)

患者の体表面から1メートル離れた地点における1センチメートル線量当量率(μSvh)

ヨウ素125シード(前立腺に適用した場合)1)

1,300

1.8

198グレイン

700

40.3



*1) 前立腺以外の部位にヨウ素125シードを適用する場合、当該部位における組織等の吸収を考慮して放射能と線量率を計算で求め、公衆及び介護者、患者を訪問する子供について抑制すべき線量の基準を遵守することとする。
(1)、(2)の基準値は適用量、物理的半減期、患者の体表面から1メートル離れた地点における占有係数(注1)、実効線量率定数(注2)(ヨウ素125シードを前立腺に用いる場合は臓器等の吸収を考慮した見掛けの実効線量率定数)に基づいて計算したものである。
3―2 診療用放射線照射器具を挿入された後の線源脱落の対策
診療用放射線照射器具の脱落に備えるため、挿入後は診療用放射線照射器具ごとに以下の対策を講じること。
(1) ヨウ素125シード
前立腺に挿入されたヨウ素125シードが膀胱や尿道に脱落する症例は1%程度とされている。万一、膀胱や尿道への脱落が術中に確認された場合は、膀胱鏡による検査を施行して脱落したシードを回収することとする。回収せず膀胱や尿道に脱落したシードは翌日までに尿中(体外)に排出されるため、患者を管理区域内に少なくとも1日入院させ、この間に尿中に排泄された線源の有無を確認したのち帰宅させること。
(2) 金198グレイン
治療部位によっては、挿入された線源が脱落することがあるが、使用施設へのアンケート調査(注3)によると、全ての線源脱落は挿入後三日以内であった。したがって、線源挿入後少なくとも3日間は放射線治療病室に入院させ、脱落に十分備えること。
以上を踏まえた上で、線源脱落の確認のため、表2に従って管理すること。

2 線源脱落の確認のための施設条件と入院期間

診療用放射線照射器具

入院させる施設条件

挿入後の最低入院期間

ヨウ素125シード(前立腺に適用した場合)2)

管理区域3)とした一般病室4)

1日間

198グレイン

放射線治療病室

3日間



*2) 前立腺以外の部位にヨウ素125シードを適用する場合、当該部位からの脱落を考慮した入院期間を設定し、管理区域とした一般病室に入院させること。
*3) 管理区域においては、医療法施行規則に従って、人がみだりに立ち入らないような措置を講じ、当該病室に立ち入る放射線診療従事者等の被ばく防止をはかるほか、放射線の量の測定、記録などを実施すること。また、管理区域で診療に当たる放射線診療従事者については、適切な教育を施すこと。なお、平成13年3月12日付け医薬発第188号通知(以下第188号通知)において一時的に管理区域を設けることが可能とされている。
*4) ヨウ素125シードを前立腺に適用する場合、診療用放射線照射器具使用室からの退出の際、他の患者が被ばくする線量が3月間につき1.3ミリシーベルトを超えるおそれのあるときは放射線治療病室に入院させること。(医療法施行規則第30条の15、第188号通知)
3―3 患者への注意及び指導事項
米国原子力規制委員会の指針(NUREG―1556 Vol.9)を参考として、患者が退出する際に患者に対して注意及び指導する事項を以下に定めた。患者の退出を許可するに当たっては、以下(1)~(3)に示す注意及び指導を患者及び家族に対して口頭及び書面で行うこと。
(1) 3―1 放射能及び線量率による基準は、一般公衆と患者の接触による被ばくを、1m離れた地点で三者が無限時間患者から受ける放射線被ばくの25%であるとの仮定の基に定めたものである。したがって、退院後の第三者に対する被ばくがこの仮定を超えるおそれのないよう、以下に示す注意及び指導が必要である。
ヨウ素125シード:
次の(ア)~(エ)のいずれかに該当する場合には、一定期間、防護具等でしゃヘいを行うなど、適切な防護措置を講じること。
(ア) 患者を訪問する子供あるいは妊婦と接触する場合
(イ) 公共の交通機関を利用する場合
(ウ) 職場で勤務する場合
(エ) 同室で就寝する者がいる場合
金198グレイン:
次の(ア)~(エ)のいずれかに該当する場合には、一定期間、適切な防護措置を講じること。
(ア) 患者を訪問する子供あるいは妊婦と接触する場合
(イ) 公共の交通機関を利用する場合
(ウ) 職場で勤務する場合
(エ) 同室で就寝する者がいる場合
(2) 退出後一定期間内に脱落線源を発見した場合は直接手で触らず、スプーン等で拾い上げ、瓶などに密閉して速やかに担当医に届け出ること。
(3) 治療後早期に患者が亡くなることは稀であるが、治療後一定期間内に患者が死亡した場合、担当医と連絡を密に取り、火葬に付す前に剖検にて線源をとりだす必要があること。